ラベル 活動報告 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 活動報告 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年1月21日木曜日

がんの治験と研究倫理について

がんの治験と研究倫理について 

公益財団法人 先端医療振興財団
監査室 倫理・安全課 調査役   薬剤師・博士(医学)  水田 浩之

「治験」に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
・ポジティブなイメージ:画期的な新薬による治療が受けられそう。
・ネガティブなイメージ:なんとなく、「実験」として使われるイメージが…

『治験』とは? (厚生労働省ホームページより)
 化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから発見された物質の中から、試験管の中での実験や動物実験により、病気に効果があり、人に使用しても安全と予測されるものが「くすりの候補」として選ばれます。この「くすりの候補」の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。→治験
 こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となります。
 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/1.html

 基礎的研究
保存期間の短いもの、投与経路(経口、静注?)














動物による研究
誰が何位に対して承認するか? 
厚生大臣が、製薬会社企業に対して承認する。製造・販売の許可

「治験」について、もう少し詳しく説明します。一般的には、3種類の試験を段階的に行います。
デザインは薬の種類、対象疾患によって変わります。

第Ⅰ相試験 : 少数の自発的志願の健常人に投与。(→探索的試験)
主に、薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(副作用)について調べる
 抗がん剤に関して、健常人に投与されることは、少ない。

第Ⅱ相試験 : 比較的少数の患者に投与。(→用量設定試験)
主に、有効性、安全性(副作用)について調べる
いくつかの用量を設定し、次の第Ⅲ相あるいは市販において最適な用量を決定することが多い。
 

第Ⅲ相試験 : 比較的多数の患者に投与。
主に、有効性、安全性(副作用)について調べる。

仮説(≒「合格」とする基準)を設定し、それをクリアするかについて調べる。(→検証的試験)


「治験」の「合否」について。
第Ⅲ相試験の「仮説」について。

例:【医薬品A】の第Ⅲ相試験における仮説

 〇〇癌患者において、【医薬品A】投与療法は、[標準治療]と比較して全生存期間を延長する。

標準治療:
治験等の科学的根拠に基づき、現在利用できる最良の治療方法であることが示されており、その疾患を有する一般的な患者に対して行われることがガイドライン等で推奨されている治療方法。
仮説は多くの場合、製薬企業がPMDAと相談しながら決定する。

「治験」の「合否」について。

「仮説」を立証(≒「合格」とする基準をクリア)できた場合は?
  →その疾患を有する患者に対してその「効能・効果」を謳うことができる薬、として承認されます。
   cf. 健康食品との違い。

「仮説」を立証できなかった場合は?
  →「治験失敗」とみなされ、承認されません。

  →「既にある薬」より劣るものは不要、という考え。
  →条件を変えて再度別の治験を実施し、対象患者・疾患を変更、もしくは限定することで承認されるケースもあります。(新たな仮説を立てる)治験のやり直しとなる。

 治験が抱える倫理的側面とは。
希望しない患者を強制的に組み入れることの危険性:欧州における、第2次大戦中のナチスによる非人道的実験への反省が起源となっている。人体実験が多数おこなわれた。

現代では:
医薬品は兆単位の巨大な利益を生み出す可能性を有するという側面がある
医薬品開発の成功・失敗は企業の株価に多大な影響を与える
医薬品開発に要する費用(500~1000億円)のうち、大半は治験費用
承認取得できる可能性は候補物質の3万分の1。基礎研究から医薬品として成功する確率(成功確率は低い)
これらのことから、企業は、
「早く症例数を集めたい」 :希望しない患者を組み入れる危険性
「治験に失敗したくない」 :企業に不利な症例を改竄する危険性、例えば、有効性があっても副作用の多い薬で、副作用を少なく改ざんする可能性がある


被験者さんを守るために、3つの倫理がある。
(1)ニュルンベルク綱領(1947年)
  : 1947年、ドイツにおける軍事裁判の1つであるニュルンベルク裁判では第2次世界大戦時のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺、人体実験などが反倫理的・反社会的な犯罪として裁かれた。
 ニュルンベルク裁判の結果の1つとして、研究目的の医療行為(臨床試験・臨床研究)を行うにあたって厳守すべき10項目の基本原則が提示された。

(2)ヘルシンキ宣言(1964年):正式名称「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」
 ニュルンベルク綱領を受け、1964年、フィンランド・ヘルシンキで開催された世界医師会第18回総会において採択した。
医学研究者が自らを規制する為の、医学研究に対する倫理規範である。
時代に合わせ改正を繰り返しており、最新版は2013年10月改正
基本原則:
 1.患者・被験者福利の尊重 、 2.本人の自発的・自由意思による参加 、 3.インフォームド・コンセント取得の必要 、 4.倫理審査委員会の存在 、 5.常識的な医学研究であること

(3)GCP(Good Clinical Practice):正式名称「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」
概要:(厚生労働省ホームページより)
1.治験の内容を国に届け出ること(=治験届) 、 2.治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること、 3.同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること 、 4.重大な副作用は国に報告すること
5.製薬会社は治験が適正に行われていることを確認すること
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/2.html

日本発の抗がん剤が世界で使われています。
小野薬品、PD-1抗体(オプジーボ)、協和発酵キリンATL治療薬(ポテリジオ)

不明な点は担当医師、治験コーディネーター等に積極的に質問、相談しましょう。
そのうえで、ご自身の治療方法の1つとして「治験」をご検討いただけるとよいかと思います。

治験と臨床研究コーディネーター

治験と臨床研究コーディネーター
公益財団法人 先端医療振興財団
先端医療センター 臨床試験支援部
臨床研究コーディネーター(JASMO公認CRCSoCRA CCRP)  江見 美和子

ドラッグラグの解消について、
国際共同試験への参加による世界同時開発
医療環境の実態が各国で異なる…部分的な解析などで対応

<国際共同試験への参加のメリット・デメリット>
新薬による早期治療開始、高い治療効果への期待
各国の試験参加者数が少なくなり、治験期間の短縮
民族的要因…用法・用量の比較検討
英語文書、システムの取り扱い…翻訳間違い

海外からの査察の受け入れ

臨床研究の分類
(1)臨床研究:人を対象として行われる医学研究

(2)臨床試験:新しく考えだされた薬や治療方法の効果や安全性を調べる試験、標準治療を調べるのに必要な試験


(3)治験:新しい薬や医療機器の製造販売承認を得るための試験
(3−1)海外で承認されている薬を国内で使用できるようにする
(3−2)既に承認されている薬の形状や用量を変更する
(3−3)既に承認されている薬の効能を追加をする
臨床研究実施のルール

(1)臨床試験:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針

(2)治験:「医薬品医療機器等法」平成26年11月25日施行

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づいて行われる。

  GCP(Good Clinical Practice) 医薬品の臨床試験の実施の基準


医療機関の治験実施体制
≪治験審査委員会≫
治験が科学的・倫理的に正しく実施できるかを審査する委員会
医薬品の開発に携わる医師、製薬企業等から独立した第三者機関
患者さんの人権保護と安全確保の観点から公正に審議

≪治験協力者≫
病院長の了承を得た専門スタッフ
治験責任医師の指導監督の下に医療関係者としての専門的立場から、治験責任・分担医師の業務に協力する
病院内に標準業務手順書(SOP)を作り、このもとに行う。

臨床研究コーディネーターって?
 Clinical Research Coodinator (CRC):看護師、薬剤師、臨床検査技師…などの医療資格を持つ人。
クラーク、秘書、農学・バイオ系などの医療業界経験者がCRCになっている。

養成研修を2週間受けたのち、2年以上の経験を積み、各種団体の認定資格を取得した人が、CRCとして活躍している。

 
CRCの役割
  ①被験者のケア 
 ②治験・臨床研究担当医師の支援
 ③モニタリング、監査対応
 ④全体のコーディネーション(病院内の医療スタッフとの調整)
  科学性、倫理性、信頼性の3本柱で動く。

CRCの所属先
先端医療センターでは、専任で行っている
医療機器等の研究開発
医薬品等の臨床研究支援
再生医療等の臨床応用
基礎研究から臨床への橋渡し研究機能を担う中核施設
総合病院
大学病院
治験施設支援機関(SMO) 
契約先の医療機関に出向き、支援業務を実施する
1日に複数施設を回ることもある 

患者さんが治験に参加、協力したい場合は?
ホームページに公開されているので探す、主治医に相談して問い合わせてほしい。

紹介状には、病歴、使用中の薬、これまでの治療経過、病理診断の結果、組織、検査や画像診断の結果等の情報が必要となる。
                            
参加するにあたって、適格基準があります。  安全面への配慮、試験の目的達成のため
適格基準には、(1)自力で通院ができる、(2)組織型、遺伝子変異、(3)以前の治療歴、抗がん剤を使用する順番、(4)心・肝・腎に問題となる異常がないこと、(5)活動性の感染症がないこと(肝炎等)、(6)日誌が書ける(パソコン操作ができる方、家で書く治験もある)  …等、多くの項目がある。

条件が細かく設定されており、1つの病院で参加人数に限りがある。
治験参加の待機や、参加中の終了もあり得る

臨床試験への同意
同意説明文章の 同意書に署名する。

(1)試験ごとに、治験審査委員会の承認を得た文書を使用
(2)作成者は、治験責任医師
(3)説明する項目が定められている
(4)内容に変更があるごとに、再度説明し試験参加継続の意思を確認する

CRCが補助説明を行います
わからないこと、医師に伝えにくいことは代弁します。


初回説明 = Bad newsの後
始めて、がんを告知されて間がない時にCRCの初回説明があったりする。

治療効果より、病気の勢いが上回った時
セカンド・オピニオン

に加えて…
臨床試験、未承認薬の説明
既存の薬や治療より有効 …かもしれない
○○が期待されている
生存期間の延長 ○ヶ月


試験の目的
治験薬の使用方法(治療方法)
参加期間とスケジュールには無理がないか
検査の内容や回数は多すぎないか
期待される効果と予測される副作用
健康被害に対する補償はどうなっているか
現在使用中の薬剤との相互作用など注意点                     など

治験は、最新の治療が受けられる?
治療効果や安全性を見るために…
標準治療 対 新しい治療や薬、最善と考えられる治療で比較する
プラセボを使用する場合もある
どちらの治療法かは「割付」による

費用負担はどうなりますか?
(1)臨床試験は、多くは健康保険で賄われるが、確認が必要
(2)治験は、保険外併用療養費制度となる。
<依頼者負担、製薬会社>治験実施計画書に定められた検査・画像診断、治験薬代は製薬会社が負担する
<自己負担>
初診、再診料
食事、寝衣、個室代
治験薬以外の薬代
負担軽減費  通院費や時間の拘束への対価、1回あたり7戦えんくらいが

プライバシーは守られますか?
守秘義務
製薬企業も、カルテ閲覧をすることがある

説明をする場所への配慮

個人情報が含まれない報告書や試料の作成、外部検査機関に提出する検体(採血、組織)、画像データ

遺伝薬理学研究とは?
探索目的の検査のための生体試料提供依頼(任意)
バイオマーカー
遺伝子
特定の遺伝性の疾患に伴う将来のリスクを調べるための検査とは異なる
病気の原因やくすりや治療に対する反応の個人差の原因をさらに見つける。
血液中成分を調べ、それらとくすりや治療の効き方との関係、人の病気や健康との関係について調べる
患者さんには、直接的な利益はない。結果は患者さんに返されない。
検体は、個人情報が削除され、連結不可能な状態で長期保存される15年以上

治験参加のメリット
(1)現時点で良い治療薬がない疾患の場合、効果の期待できる薬による治療を受けることができる可能性がある。
(2)現時点での標準治療よりも有効性・安全性の高い最新の治療を受けることができる可能性がある。
(3)その疾患に対する診療についてより高い専門性を有する経験豊富な専門医による、通常診療よりも詳細な診察・検査等が行われる。
(4)治験にかかる費用の全額または一部は治験を依頼する製薬企業側が負担し、負担軽減費(交通費など)が支給されることも多い。
(5)その疾患に対する治療法の発展に貢献できる。

治験参加のデメリット
(1)治験薬群ではなく、対照群(プラセボあるいは標準治療)に割り当てられる可能性がある。
(2)当初期待した有効性が得られない可能性がある。
(3)予想しない副作用が現れる可能性がある。
(4)現在実施中の治療法を中止・変更する必要が生じる可能性がある。治験参加中に中間解析で効果が見えてこない時には、中止もある。
(5)通常診療より来院や検査の回数が増えたり、通常診療には無い日誌・アンケート等の記入を求められることが多い。
(6)治験のための機能が整備された特定の病院において実施されるため、現在通院中の病院から転院する必要が生じる場合がある。

自由意思による同意
もう一つの治療選択肢が増えた。
新しい薬を使用できるチャンスかも…期待
安全なのかしら…不安
参加はいつでも取りやめることができる
不参加の場合でも不利益を受けない

健康被害に対する補償制度
(1)治験の場合は、製薬会社が保険に加入
 治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害(治験にかかわる業務を委託した場合における当該受託者業務により生じたものを含む。)の補償のために、保険その他の必要な措置を講じておかなければならない。(GCP)  
(2)臨床研究の場合、研究責任者が検討、準備
両者ともに、賠償(違法性、過失あり)とは異なる。

補償 ~抗がん剤の場合~
治験薬(対照薬)、計画書に定めた治験実施と
因果関係がある健康被害が対象
原則、治療費の負担
医療費…健康保険や高額療養費制度を利用した自己負担分
医療手当…入院を伴った場合交通費や入院費
(補償金…健康人対象の試験、治療上のメリットのない試験)

故意、過失がないこと、効果不発揮は対象外

臨床試験の情報
各病院のホームページ
JAPIC 日本医薬情報センター 「医薬品情報データベース」
 http://database.japic.or.jp/is/top/index.jsp
日本医師会治験促進センター 臨床試験登録システム
 https://dbcentre3.jmacct.med.or.jp/jmactr/
日本製薬工業協会 「開発中の新薬」
 http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/development/index.html
UMIN臨床試験登録システム 
 http://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm

ご協力いただいた方の声
・先生や看護師さんは忙しいから、話を聞いてもらえてよかった
・詳しく案内してれるので、病院で迷うことなく助かった
・参加した結果が他の人のお役に立つなら
・外来待ちの時間が減ったり、待つ苦痛が軽減
・負担軽減費が、通院や治療費に充てられるので助かる
・がん保険に加入しておらず治療は諦めていたので助かる
CRCは、治療の架け橋となる
・誰かの役に立つ
人生をがんと共に生きる

2015年9月14日月曜日

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その3

がん就労支援講演会報告-3

このブログでは、(3)「情報の過不足ない共有で 就労の課題解決へ」
    講師  がんと共に生きる会 副理事長 大阪がんええナビ制作委員会理事長 濱本満紀氏の講演を記録します。

 最初は、私の自己紹介から始めます。『愛する者に同じ思いをさせないために』をスローガンに、2001年 がんと共に生きる会を設立しました。“非常に進行したがん患者と家族”が各地から集結し、会がスタートしました。
当初の3つの目的は 
1.地域格差・施設間格差 ⇒ がん治療の均てん化
2.ドラッグラグ    欧米先進国並み(500)
3.抗がん剤を使いこなせる医師の不足 ⇒ 解消
会の発足当時は、“均てん化”の言葉すら生まれていなかった頃です。がん患者とその家族達が治療を求めてさまよった“がん難民”の時代でした。今の患者・家族は 情報の奔流に浮き沈みする “情報流民”ではないかと危惧します。

そこで、適切な情報の獲得と活用を合言葉に、同じ思いを持つ患者団体、支援団体が大阪の地で“患者目線のがん情報提供”を考え始めました。
■患者目線の情報発信
「よくわかる ! 大阪のがん診療NOW」  20102月よりスタートしました。
★現況報告より、大阪府内全てのがん拠点病院(60施設)のデータ400項目以上を紹介。 
 この中では、国指定のみならず、府指定がん拠点病院も閲覧できるようにした。
★病院間で情報を比較閲覧。
★検索手順の工夫、用語解説で分かりやすく。

 「がんと共に生きる会」は、3つの患者団体と共に項目選定に協力。ここから患者の視点を取り入れた、新しいウェブサイト「大阪がんええナビ」に成長しています。
★内容は、
①がん情報ナビゲーター
 まず自分の状態を知る。必要な情報はなにか? 
4つのカテゴリー
 予防・検診・治療法・薬・制度・保険・療養生活・患者支援 など
③オリジナルコンテンツ
 ・拠点病院の情報に直結 ・識者のコラムに親近感 ・分かりやすい用語集
 4つの支援サイト注目カテゴリーへバナーリンク ⇒生活支援情報、小児からAYA世代のがん情  
   報、がん教育、骨転移支援情報サイト“Walk Together”、これは新しい試みです!!

情報は患者の力。
単なる情報発信サイトではなく、医療・社会と患者をつなぐサイトをめざしています。
3月公開 大阪がんええナビは、こんなサイトです















1回『がん患者就労支援意見交換会』を201467日、下記のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人がんと共に生きる会
     NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  会場:大阪府立成人病センター 6階講堂
2回『がん患者就労支援意見交換会』を、1回目の反省を踏まえ、2014126日(土)次のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  後援:関西がんチーム医療研究会
    NPO法人泉州がん医療ネットワーク
  会場:難波市民学習センター 講堂
  ファシリテーター:東京大学 公共政策大学院
           医療政策教育・研究ユニット 特任教授 埴岡健一 氏
開催趣旨
【背景】がん患者側の就労支援に対するニーズの表出を考えたとき、取り組むべき課題、必要とされる連携・協働体制については、具体的な取り組み方法は定まっていないのが実情である。
【目的】就労支援の課題克服のために必要と思える連携体制について、多職種によって議論を深める。克服すべき課題と具体的な取り組み案を参加者全員で共有する。
【方法】グループ・ディスカッションによる議論と発表
開催内容
グループ・ディスカッション 1
  テーマ 「いま、何が問題?」
    ・何に困っていますか?
    ・何をすれば良い?
  ※問題点をグループ分け、次で議論するテーマを決定する。

グループ・ディスカッション 2
  テーマ 「どのようにすれば良い?
     ・誰が、どうすれば良い?  ※主役は誰なのか?
     ・その際の連携は?
5グループのまとめ
・5グループ中4グループが、患者の就労支援については医師・看護師の医療者が中心となる、としている。
問題点は、情報の共有です。

下図のような関係が望ましいのではないかと考えます




『がん患者就労支援意見交換会』の考察は、
具体的な方策の立案・実施を行うためには、医療者用チェックリスト・就労連携パス等のツールが必要です。このツールは、患者のニーズを把握するため、勤務先への情報提供を行うための重要なキーとなります。
病院、企業内での相談・対応事例の蓄積、レベルアップが必要です。
多職種によるコミュニケーションの場づくりのために⇒実際の連携へ結びつくには、ワーキンググループの設置や、病院外の連携先も含めた症例検討会等が必要となるでしょう。 
患者同士が一緒に考えることができる場の提供も重要です。



      【当会の主な就労支援活動・発表】
・「がん政策サミット2015」春・秋開催
・「がん患者就労支援 意見交換会」当会主催
・「とよなかがんサロン」市立豊中病院
・「がんと仕事の教室」 近畿大学医学部附属病院
・ ベルランド総合病院
・ 八尾市立病院
・ 大阪警察病院               等、拠点病院との連携

・ FFJCP「就労問題を考える分科会」
・ 奈良県庁・奈良県社会保険労務士会
・ 大阪府社会保険労務士会
   その他

  患者・医療者・勤務先の過不足ない情報共有による円滑なコミュニケーションの存在が、就労継続を容易にするための前提になる。
   ≪相談のポイント≫
     (1) (がんに罹患したことを)誰に、どこまで知らせるのかを整理する。
     (2) 日常の円滑なコミュニケーションに向けてのアドバイス
      (3) 休暇中には、どのようにしたらよいか
      (4) 復職の時期に向けた準備と、復帰へ結びつける

(1)(がんに罹患したことを)誰にどこまで伝えるかを整理する。
   ①伝える必要があるのか、どうか
   ・安全配慮義務との関係
   ・配慮するべき、してもらうべき事項があれば職場の担当者、患者の間で考える。
  (特に治療や後遺症等により、仕事に影響や支障が生じる場合、医療者の見解・指示の共有が大切です。)

 ②患者の気持ち、職場事情を確認
   本人の意向と職場の事情を照らし合わせながら、伝えるメリット・伝えないメリットを一緒に整理する。

 (2)日常の円滑なコミュニケーションに向けて
 ①職場の人たちが相談者を“見ている“ことを知る必要があります。
   ⇒病気のことを伝えても、伝えなくても、一緒に仕事をしていく 
     仲間として、どう接していくかを改めて考える必要があります。
 ②これからも気持ちよく安心して仕事を続けていくために
   相談者自身にも出来ることがあるはず
    ◆コミュニケーションのちょっとした工夫
     ・感謝の気持ちを伝える。
     ・できることは精一杯する。
     ・「できないこと」ではなく、「できること」を伝えていく。

 ⇒自分自身で職場での「居場所」を取り戻していく努力も必要

 (3)休職中には
 ①相談者は医療者を通じて自分の状況や見通しなどをしっかり把握、定期的に報告し、勤務先はそれを理解する。
  ・相談者/お礼や、最近の自分の状況・今後の見通しを勤務先に伝える。
  ・勤務先/受入れ態勢の準備を整え、スムーズな復帰体制を
4)復職の時期にむけた準備、復帰へ
 ① 患者は生活習慣を整える
   入院や治療などによって乱れた生活リズムを取り戻す努力をする。
 ② 模擬出勤などで実際にイメージをする
   患者は通勤に利用している交通手段で、通勤時間に勤務先まで行ってみる。勤務先はそれを見守る。
 ③ 具体的な復職の時期・仕事内容を確認
   復職に際し、患者と担当者は配慮の必要の有無・要望について改めて話し合う。
   (勤務時間短縮、配属先、事情の公表先や範囲など)
 
 医療者は引き続き、患者の職場復帰が最善の形を取れるようアドバイスする。
  ・医療者/患者の仕事内容を理解したうえでの職場復帰に向けたアドバイスや、必要であれば勤務先との連絡を取る。

       ⇒第三者の情報共有により、復職後の望ましい環境を作ることができる。 



 
■患者目線の情報発信

就労・生活面に悩みをもつがん・難病患者や家族への情報提供・相談支援
弁護士、行政書士、社労士、ファイナンシャルプランナーなど、多士業連携で対応
 どういう状況のどういう形であれ、自分で自分の受ける医療や支援、さらにその後の自分や家族の人生のあり方を選択できるように。

 適切な情報を得て『選択・活用』する時、医療者や企業に留まらず、行政・議会や世論を含む社会全体が、良き伴走者としての役割を担うことが望まれます。

  
なによりもあなたとあなたの愛する人のため、かけがえのない日々を大切にして下さい。

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その2

がん就労支援講演会報告-2

このブログでは、(2)「仕事とお金のお悩み相談会~専門家チームで支えたい~」
      講師  兵庫医科大学病院相談支援センター 西村裕美子氏の内容を記録します。

 何ができる?「働くことのサポートって」
 がん治療の進歩によって治療法の幅が拡大し、外来通院しながら治療を受けるといった、治療期の長期化がみられます。そういった中で、院内のみでは解決が不可能な経済的・社会的な支援に直面し、社会資源の提供に限界を感じていました。仕事と収入とは一体のものではないのか、対人関係において自分以外の他者へがんに罹患したことをどのようにどう伝えるべきなのか、経済的な問題と社会的問題は切っても切り離せないものではないかと考えはじめ、就労支援体制の充実を図る取り組みを始めました。
 がんになっても安心して働き暮らせるしくみや、ハローワークと連携した就労相談支援モデル事業などを参考に兵庫医科大学病院内で「実現可能な就労支援」の相談会を考えました。
また、がん専門相談員としてCSR就労支援スキルアップ研修や「就労リング」ファシリテーター養成講座2014を受講することでスキルアップを図り自己研鑽に努めました。


「がん治療生活を支える相談会」の強み
兵庫医科大学病院の就労支援の強みは、がんライフアドバイザー(ファイナンシャルプランナー;FP)、社会保険労務士、がん相談員(がん看護専門看護師)が、専門家チームとしてご相談を受けることです互いに補完関係を結びながら、気がかりや困りごとなど。
3つの場面を話します
(1)  治療しながら働くには
(2)  働くことが困難になったら
(3)  働く環境をどうしたらいいか

(1)治療しながら働くには・・・「治療をしながら仕事を続けたい」
『自分の治療費だけは自分で働いて稼ぐつもりで仕事を続けたい。続けながら治療はできる?』
『職場の理解があって調整させてもらえそうなんです。調理関係の仕事なので、副作用が心配で…』
『営業の仕事なので周りにばれないように、かつらのことも考えないとね』

どんなスタイルで働くことが良いか一緒に考えましょう!  
就労支援①
・就労と治療のスケジュールの見通し
・副作用の対策を一緒にしていきましょう
・倦怠感や疲労が強い際には、今の仕事内容が続けられるように職場にどのように伝えるか具体的に話し合いましょう

(2)働くことが困難になったら・・・「もう仕事は続けることができない」
 直ぐに辞めないでこれまで働くことで社会に貢献されてきました。使える制度はないか一緒に考えてみましょう
就労支援②
・辞めないで継続していくことを支えたい
・就業規則の内容はどうなっているか確認しましょう
* 退職せず社会保障制度受給
* 傷病手当金や障害年金の申請は…
* 既に老年年金をもらっている場合どうしたらよいか考えましょう
・休職/病気休暇をとった場合使える制度は何か
・人事・総務課との交渉や伝え方のアドバイス
・自営業の場合サポートしてくれる人や内容は何か、どうなっているのか一緒に確認しましょう

(3)働く環境をどうしたらいいか・・・「仕事をどうしたらいいですか」
復職の大変さはとてもよくわかります。誰にどのように話していくか一緒に考えましょう
就労支援③
・就業規則の内容はどうなっているか確認しましょう
ホームページや人事・総務などで確認

・どのタイミングで、誰に(人事・労務関係者・産業医など)どのように話すか具体的に話し合い、伝え方のアドバイスをする。
・仕事における復職後の自分の能力について知ってもらう
がんの治療を行っている期間の休暇や勤務日、勤務時間など仕事ができる限度や許容を話し合う機会をつくりましょう

2年で35名を支援してきた。
20%カラ25%が就労の支援ができた。

がん相談センターに相談してください。

気がかりや困りごとの「整理」をしながら、使える制度を確認し合う中で「一緒にみつける」ことをしてみませんか? 是非、兵庫県内のがん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターに相談してください。