2015年10月6日火曜日

「がん医療市民講座」がんの治験について、講演会のお知らせです

『 がんの治験をご存知ですか 』というタイトルで、2015年11月15日(日)14時より、講演会があります。治験を受けようと思っている患者さん、ご家族の方、ぜひ参加してください。
がんの治療方法や、薬について、理解が深まると思います。

2015年9月14日月曜日

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その3

がん就労支援講演会報告-3

このブログでは、(3)「情報の過不足ない共有で 就労の課題解決へ」
    講師  がんと共に生きる会 副理事長 大阪がんええナビ制作委員会理事長 濱本満紀氏の講演を記録します。

 最初は、私の自己紹介から始めます。『愛する者に同じ思いをさせないために』をスローガンに、2001年 がんと共に生きる会を設立しました。“非常に進行したがん患者と家族”が各地から集結し、会がスタートしました。
当初の3つの目的は 
1.地域格差・施設間格差 ⇒ がん治療の均てん化
2.ドラッグラグ    欧米先進国並み(500)
3.抗がん剤を使いこなせる医師の不足 ⇒ 解消
会の発足当時は、“均てん化”の言葉すら生まれていなかった頃です。がん患者とその家族達が治療を求めてさまよった“がん難民”の時代でした。今の患者・家族は 情報の奔流に浮き沈みする “情報流民”ではないかと危惧します。

そこで、適切な情報の獲得と活用を合言葉に、同じ思いを持つ患者団体、支援団体が大阪の地で“患者目線のがん情報提供”を考え始めました。
■患者目線の情報発信
「よくわかる ! 大阪のがん診療NOW」  20102月よりスタートしました。
★現況報告より、大阪府内全てのがん拠点病院(60施設)のデータ400項目以上を紹介。 
 この中では、国指定のみならず、府指定がん拠点病院も閲覧できるようにした。
★病院間で情報を比較閲覧。
★検索手順の工夫、用語解説で分かりやすく。

 「がんと共に生きる会」は、3つの患者団体と共に項目選定に協力。ここから患者の視点を取り入れた、新しいウェブサイト「大阪がんええナビ」に成長しています。
★内容は、
①がん情報ナビゲーター
 まず自分の状態を知る。必要な情報はなにか? 
4つのカテゴリー
 予防・検診・治療法・薬・制度・保険・療養生活・患者支援 など
③オリジナルコンテンツ
 ・拠点病院の情報に直結 ・識者のコラムに親近感 ・分かりやすい用語集
 4つの支援サイト注目カテゴリーへバナーリンク ⇒生活支援情報、小児からAYA世代のがん情  
   報、がん教育、骨転移支援情報サイト“Walk Together”、これは新しい試みです!!

情報は患者の力。
単なる情報発信サイトではなく、医療・社会と患者をつなぐサイトをめざしています。
3月公開 大阪がんええナビは、こんなサイトです















1回『がん患者就労支援意見交換会』を201467日、下記のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人がんと共に生きる会
     NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  会場:大阪府立成人病センター 6階講堂
2回『がん患者就労支援意見交換会』を、1回目の反省を踏まえ、2014126日(土)次のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  後援:関西がんチーム医療研究会
    NPO法人泉州がん医療ネットワーク
  会場:難波市民学習センター 講堂
  ファシリテーター:東京大学 公共政策大学院
           医療政策教育・研究ユニット 特任教授 埴岡健一 氏
開催趣旨
【背景】がん患者側の就労支援に対するニーズの表出を考えたとき、取り組むべき課題、必要とされる連携・協働体制については、具体的な取り組み方法は定まっていないのが実情である。
【目的】就労支援の課題克服のために必要と思える連携体制について、多職種によって議論を深める。克服すべき課題と具体的な取り組み案を参加者全員で共有する。
【方法】グループ・ディスカッションによる議論と発表
開催内容
グループ・ディスカッション 1
  テーマ 「いま、何が問題?」
    ・何に困っていますか?
    ・何をすれば良い?
  ※問題点をグループ分け、次で議論するテーマを決定する。

グループ・ディスカッション 2
  テーマ 「どのようにすれば良い?
     ・誰が、どうすれば良い?  ※主役は誰なのか?
     ・その際の連携は?
5グループのまとめ
・5グループ中4グループが、患者の就労支援については医師・看護師の医療者が中心となる、としている。
問題点は、情報の共有です。

下図のような関係が望ましいのではないかと考えます




『がん患者就労支援意見交換会』の考察は、
具体的な方策の立案・実施を行うためには、医療者用チェックリスト・就労連携パス等のツールが必要です。このツールは、患者のニーズを把握するため、勤務先への情報提供を行うための重要なキーとなります。
病院、企業内での相談・対応事例の蓄積、レベルアップが必要です。
多職種によるコミュニケーションの場づくりのために⇒実際の連携へ結びつくには、ワーキンググループの設置や、病院外の連携先も含めた症例検討会等が必要となるでしょう。 
患者同士が一緒に考えることができる場の提供も重要です。



      【当会の主な就労支援活動・発表】
・「がん政策サミット2015」春・秋開催
・「がん患者就労支援 意見交換会」当会主催
・「とよなかがんサロン」市立豊中病院
・「がんと仕事の教室」 近畿大学医学部附属病院
・ ベルランド総合病院
・ 八尾市立病院
・ 大阪警察病院               等、拠点病院との連携

・ FFJCP「就労問題を考える分科会」
・ 奈良県庁・奈良県社会保険労務士会
・ 大阪府社会保険労務士会
   その他

  患者・医療者・勤務先の過不足ない情報共有による円滑なコミュニケーションの存在が、就労継続を容易にするための前提になる。
   ≪相談のポイント≫
     (1) (がんに罹患したことを)誰に、どこまで知らせるのかを整理する。
     (2) 日常の円滑なコミュニケーションに向けてのアドバイス
      (3) 休暇中には、どのようにしたらよいか
      (4) 復職の時期に向けた準備と、復帰へ結びつける

(1)(がんに罹患したことを)誰にどこまで伝えるかを整理する。
   ①伝える必要があるのか、どうか
   ・安全配慮義務との関係
   ・配慮するべき、してもらうべき事項があれば職場の担当者、患者の間で考える。
  (特に治療や後遺症等により、仕事に影響や支障が生じる場合、医療者の見解・指示の共有が大切です。)

 ②患者の気持ち、職場事情を確認
   本人の意向と職場の事情を照らし合わせながら、伝えるメリット・伝えないメリットを一緒に整理する。

 (2)日常の円滑なコミュニケーションに向けて
 ①職場の人たちが相談者を“見ている“ことを知る必要があります。
   ⇒病気のことを伝えても、伝えなくても、一緒に仕事をしていく 
     仲間として、どう接していくかを改めて考える必要があります。
 ②これからも気持ちよく安心して仕事を続けていくために
   相談者自身にも出来ることがあるはず
    ◆コミュニケーションのちょっとした工夫
     ・感謝の気持ちを伝える。
     ・できることは精一杯する。
     ・「できないこと」ではなく、「できること」を伝えていく。

 ⇒自分自身で職場での「居場所」を取り戻していく努力も必要

 (3)休職中には
 ①相談者は医療者を通じて自分の状況や見通しなどをしっかり把握、定期的に報告し、勤務先はそれを理解する。
  ・相談者/お礼や、最近の自分の状況・今後の見通しを勤務先に伝える。
  ・勤務先/受入れ態勢の準備を整え、スムーズな復帰体制を
4)復職の時期にむけた準備、復帰へ
 ① 患者は生活習慣を整える
   入院や治療などによって乱れた生活リズムを取り戻す努力をする。
 ② 模擬出勤などで実際にイメージをする
   患者は通勤に利用している交通手段で、通勤時間に勤務先まで行ってみる。勤務先はそれを見守る。
 ③ 具体的な復職の時期・仕事内容を確認
   復職に際し、患者と担当者は配慮の必要の有無・要望について改めて話し合う。
   (勤務時間短縮、配属先、事情の公表先や範囲など)
 
 医療者は引き続き、患者の職場復帰が最善の形を取れるようアドバイスする。
  ・医療者/患者の仕事内容を理解したうえでの職場復帰に向けたアドバイスや、必要であれば勤務先との連絡を取る。

       ⇒第三者の情報共有により、復職後の望ましい環境を作ることができる。 



 
■患者目線の情報発信

就労・生活面に悩みをもつがん・難病患者や家族への情報提供・相談支援
弁護士、行政書士、社労士、ファイナンシャルプランナーなど、多士業連携で対応
 どういう状況のどういう形であれ、自分で自分の受ける医療や支援、さらにその後の自分や家族の人生のあり方を選択できるように。

 適切な情報を得て『選択・活用』する時、医療者や企業に留まらず、行政・議会や世論を含む社会全体が、良き伴走者としての役割を担うことが望まれます。

  
なによりもあなたとあなたの愛する人のため、かけがえのない日々を大切にして下さい。

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その2

がん就労支援講演会報告-2

このブログでは、(2)「仕事とお金のお悩み相談会~専門家チームで支えたい~」
      講師  兵庫医科大学病院相談支援センター 西村裕美子氏の内容を記録します。

 何ができる?「働くことのサポートって」
 がん治療の進歩によって治療法の幅が拡大し、外来通院しながら治療を受けるといった、治療期の長期化がみられます。そういった中で、院内のみでは解決が不可能な経済的・社会的な支援に直面し、社会資源の提供に限界を感じていました。仕事と収入とは一体のものではないのか、対人関係において自分以外の他者へがんに罹患したことをどのようにどう伝えるべきなのか、経済的な問題と社会的問題は切っても切り離せないものではないかと考えはじめ、就労支援体制の充実を図る取り組みを始めました。
 がんになっても安心して働き暮らせるしくみや、ハローワークと連携した就労相談支援モデル事業などを参考に兵庫医科大学病院内で「実現可能な就労支援」の相談会を考えました。
また、がん専門相談員としてCSR就労支援スキルアップ研修や「就労リング」ファシリテーター養成講座2014を受講することでスキルアップを図り自己研鑽に努めました。


「がん治療生活を支える相談会」の強み
兵庫医科大学病院の就労支援の強みは、がんライフアドバイザー(ファイナンシャルプランナー;FP)、社会保険労務士、がん相談員(がん看護専門看護師)が、専門家チームとしてご相談を受けることです互いに補完関係を結びながら、気がかりや困りごとなど。
3つの場面を話します
(1)  治療しながら働くには
(2)  働くことが困難になったら
(3)  働く環境をどうしたらいいか

(1)治療しながら働くには・・・「治療をしながら仕事を続けたい」
『自分の治療費だけは自分で働いて稼ぐつもりで仕事を続けたい。続けながら治療はできる?』
『職場の理解があって調整させてもらえそうなんです。調理関係の仕事なので、副作用が心配で…』
『営業の仕事なので周りにばれないように、かつらのことも考えないとね』

どんなスタイルで働くことが良いか一緒に考えましょう!  
就労支援①
・就労と治療のスケジュールの見通し
・副作用の対策を一緒にしていきましょう
・倦怠感や疲労が強い際には、今の仕事内容が続けられるように職場にどのように伝えるか具体的に話し合いましょう

(2)働くことが困難になったら・・・「もう仕事は続けることができない」
 直ぐに辞めないでこれまで働くことで社会に貢献されてきました。使える制度はないか一緒に考えてみましょう
就労支援②
・辞めないで継続していくことを支えたい
・就業規則の内容はどうなっているか確認しましょう
* 退職せず社会保障制度受給
* 傷病手当金や障害年金の申請は…
* 既に老年年金をもらっている場合どうしたらよいか考えましょう
・休職/病気休暇をとった場合使える制度は何か
・人事・総務課との交渉や伝え方のアドバイス
・自営業の場合サポートしてくれる人や内容は何か、どうなっているのか一緒に確認しましょう

(3)働く環境をどうしたらいいか・・・「仕事をどうしたらいいですか」
復職の大変さはとてもよくわかります。誰にどのように話していくか一緒に考えましょう
就労支援③
・就業規則の内容はどうなっているか確認しましょう
ホームページや人事・総務などで確認

・どのタイミングで、誰に(人事・労務関係者・産業医など)どのように話すか具体的に話し合い、伝え方のアドバイスをする。
・仕事における復職後の自分の能力について知ってもらう
がんの治療を行っている期間の休暇や勤務日、勤務時間など仕事ができる限度や許容を話し合う機会をつくりましょう

2年で35名を支援してきた。
20%カラ25%が就労の支援ができた。

がん相談センターに相談してください。

気がかりや困りごとの「整理」をしながら、使える制度を確認し合う中で「一緒にみつける」ことをしてみませんか? 是非、兵庫県内のがん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターに相談してください。

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その1

 近年、医療技術の進歩や医療提供体制の整備等により、長期にわたって治療を受けながら就職を希望される方が多くなっています。然しながら、就労者の多くが依願退職したり解雇されているのが実態です。兵庫県では、県立がんセンターが「がん患者等に対する就職支援モデル事業」モデル事業所として指定されています。
兵庫県内での取り組みの実際や課題・展望をそれぞれの担当者をお迎えして話を伺いました。

Ⅰ、日  時  2015年9月13日(日) 14:00~16:30
Ⅱ、場  所  神戸市立医療センター中央市民病院 1階 講堂
Ⅲ、テーマ がんになっても安心して働くことのできる兵庫県をめざして

講演内容
(1)「当院での就労支援モデル事業~実施の実際と課題~」
      講師  県立がんセンター相談支援センター 橋口周子氏
(2)「仕事とお金のお悩み相談会~専門家チームで支えたい~」
      講師  兵庫医科大学病院相談支援センター 西村裕美子氏
(3)「患者・家族・医療者、そして企業における、情報の過不足ない共有で 就労の課題解決へ」
      講師  がんと共に生きる会 副理事長     濱本満紀氏

このブログでは、(1)「当院での就労支援モデル事業~実施の実際と課題~」
      講師  県立がんセンター相談支援センター 橋口周子氏の講演を記録します。

がんの罹患者数800,014人の内、年齢別では・・・20-64歳:259,304人、20-69歳:365,192人と、3人に1人は就労可能年齢でがんに罹患しています。
・仕事を持ちながら、通院している方は、325000人、内訳 男性;14.4万人、女性18.1万人



左図は、がんになった場合に心配することという、日本能率協会総合研究所「がんのメカニズムと予防に関する調査」(2011年)の表です。

がん患者の就労の現状と問題
1.がん患者の就労環境について
•従業員1000人以上の大企業・官公庁:28%
•従業員500999人 : 6%
•従業員100499人 :19%
•従業員30 99人 :16%
•従業員 1~ 29人 :26%
2.診断時に勤務していた会社や営んでいた事業などについて
•勤務者の34%が依願退職・解雇
•自営業の方の13%が廃業

診断後の収入の変化は、診断前の平均年収は、約395万円だったものが、診断後では約167万円と半分以下に低下しています。

 

就労支援(国の施策)は、左の図です。














がん患者等に対する就職支援モデル事業は、左図です。








兵庫県立がんセンターでの長期療養者に対する就職支援モデル事業の流れは、
相談実績は、(2013年10月から2015年06月)相談件数89件、新規求職者41名、新規就職件数6件(内、2件は自己就職)でした。
 
今までの就職支援から見えてきたことは、兵庫県立がんセンターでの就職支援の傾向として、①治療継続中よりも経過観察中の患者さんが多い。②診断後1~2年くらいの方が多い。③就職する際に、病名は伏せている傾向がある。④勤務先への要望が、比較的少ない方が多い。⑤就職先は、もともとのお仕事とは異なる業種に就くパターンが多い。ということがあげられる。

就労に関する相談対応事例
  仕事場に自分の病気のことをどこまで話せばよいのか?
  仕事復帰したが、フルタイムで働くことが体力的に辛く、上司に相談したところ、雇用形態の変更を提示された(正社員⇒パートへ)。ちゃんと働けるようになれば、元の雇用形態に戻すといわれているが、応じてよいのか?→社労士に紹介した。
  治療後の体力低下が著しく、予定していた時期に職場復帰ができるか、現時点での見通しが知りたい。身体の負担が最小限になるために活用できる制度などはあるのか?

2年余りの就労支援を行ってみて ~課題や難しさ~についてまとめます。
  対応範囲の拡大の必要性。就業だけでなく、就職準備に関する支援や離職防止の支援などが必要です。
  就職先の開拓の必要性
  がん患者は「就労困難者」の位置づけではないことからくる弊害。障害者雇用の特典が企業にないことが問題である。

医療者が就労支援を行うために次のことがあげられます。
①前提として、労働・社会保障に関する知識を持つ必要があります。就労に関する支援は、医療のみでは完結しない。が、私たち医療者は、どうしても労働に関する知識が乏しい。そのことを自覚する。
  職種による専門性を持ってできること、すべきことを考えると。
–病院にいる医療・福祉職の専門性、得意分野を知っておき、適切に連携していくことが必要。
③部署(持ち場)に応じてできること、すべきことを理解する必要があります。病棟・外来、相談部門など

看護師ができる就労に関する支援
•「仕事をすぐに辞めなくて良い」ことを伝える
•治療と仕事(生活)を両立できるような副作用対策や治療スケジュールの調整

•経済的問題の裏に就労に関する課題がないかを見極める。