2015年9月14日月曜日

2015年9月「がん医療市民講座」講演抄録、『がんになっても安心して働くことができる兵庫県をめざして』、その3

がん就労支援講演会報告-3

このブログでは、(3)「情報の過不足ない共有で 就労の課題解決へ」
    講師  がんと共に生きる会 副理事長 大阪がんええナビ制作委員会理事長 濱本満紀氏の講演を記録します。

 最初は、私の自己紹介から始めます。『愛する者に同じ思いをさせないために』をスローガンに、2001年 がんと共に生きる会を設立しました。“非常に進行したがん患者と家族”が各地から集結し、会がスタートしました。
当初の3つの目的は 
1.地域格差・施設間格差 ⇒ がん治療の均てん化
2.ドラッグラグ    欧米先進国並み(500)
3.抗がん剤を使いこなせる医師の不足 ⇒ 解消
会の発足当時は、“均てん化”の言葉すら生まれていなかった頃です。がん患者とその家族達が治療を求めてさまよった“がん難民”の時代でした。今の患者・家族は 情報の奔流に浮き沈みする “情報流民”ではないかと危惧します。

そこで、適切な情報の獲得と活用を合言葉に、同じ思いを持つ患者団体、支援団体が大阪の地で“患者目線のがん情報提供”を考え始めました。
■患者目線の情報発信
「よくわかる ! 大阪のがん診療NOW」  20102月よりスタートしました。
★現況報告より、大阪府内全てのがん拠点病院(60施設)のデータ400項目以上を紹介。 
 この中では、国指定のみならず、府指定がん拠点病院も閲覧できるようにした。
★病院間で情報を比較閲覧。
★検索手順の工夫、用語解説で分かりやすく。

 「がんと共に生きる会」は、3つの患者団体と共に項目選定に協力。ここから患者の視点を取り入れた、新しいウェブサイト「大阪がんええナビ」に成長しています。
★内容は、
①がん情報ナビゲーター
 まず自分の状態を知る。必要な情報はなにか? 
4つのカテゴリー
 予防・検診・治療法・薬・制度・保険・療養生活・患者支援 など
③オリジナルコンテンツ
 ・拠点病院の情報に直結 ・識者のコラムに親近感 ・分かりやすい用語集
 4つの支援サイト注目カテゴリーへバナーリンク ⇒生活支援情報、小児からAYA世代のがん情  
   報、がん教育、骨転移支援情報サイト“Walk Together”、これは新しい試みです!!

情報は患者の力。
単なる情報発信サイトではなく、医療・社会と患者をつなぐサイトをめざしています。
3月公開 大阪がんええナビは、こんなサイトです















1回『がん患者就労支援意見交換会』を201467日、下記のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人がんと共に生きる会
     NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  会場:大阪府立成人病センター 6階講堂
2回『がん患者就労支援意見交換会』を、1回目の反省を踏まえ、2014126日(土)次のような内容で開催しました。
  主催:NPO法人大阪がんええナビ制作委員会
  後援:関西がんチーム医療研究会
    NPO法人泉州がん医療ネットワーク
  会場:難波市民学習センター 講堂
  ファシリテーター:東京大学 公共政策大学院
           医療政策教育・研究ユニット 特任教授 埴岡健一 氏
開催趣旨
【背景】がん患者側の就労支援に対するニーズの表出を考えたとき、取り組むべき課題、必要とされる連携・協働体制については、具体的な取り組み方法は定まっていないのが実情である。
【目的】就労支援の課題克服のために必要と思える連携体制について、多職種によって議論を深める。克服すべき課題と具体的な取り組み案を参加者全員で共有する。
【方法】グループ・ディスカッションによる議論と発表
開催内容
グループ・ディスカッション 1
  テーマ 「いま、何が問題?」
    ・何に困っていますか?
    ・何をすれば良い?
  ※問題点をグループ分け、次で議論するテーマを決定する。

グループ・ディスカッション 2
  テーマ 「どのようにすれば良い?
     ・誰が、どうすれば良い?  ※主役は誰なのか?
     ・その際の連携は?
5グループのまとめ
・5グループ中4グループが、患者の就労支援については医師・看護師の医療者が中心となる、としている。
問題点は、情報の共有です。

下図のような関係が望ましいのではないかと考えます




『がん患者就労支援意見交換会』の考察は、
具体的な方策の立案・実施を行うためには、医療者用チェックリスト・就労連携パス等のツールが必要です。このツールは、患者のニーズを把握するため、勤務先への情報提供を行うための重要なキーとなります。
病院、企業内での相談・対応事例の蓄積、レベルアップが必要です。
多職種によるコミュニケーションの場づくりのために⇒実際の連携へ結びつくには、ワーキンググループの設置や、病院外の連携先も含めた症例検討会等が必要となるでしょう。 
患者同士が一緒に考えることができる場の提供も重要です。



      【当会の主な就労支援活動・発表】
・「がん政策サミット2015」春・秋開催
・「がん患者就労支援 意見交換会」当会主催
・「とよなかがんサロン」市立豊中病院
・「がんと仕事の教室」 近畿大学医学部附属病院
・ ベルランド総合病院
・ 八尾市立病院
・ 大阪警察病院               等、拠点病院との連携

・ FFJCP「就労問題を考える分科会」
・ 奈良県庁・奈良県社会保険労務士会
・ 大阪府社会保険労務士会
   その他

  患者・医療者・勤務先の過不足ない情報共有による円滑なコミュニケーションの存在が、就労継続を容易にするための前提になる。
   ≪相談のポイント≫
     (1) (がんに罹患したことを)誰に、どこまで知らせるのかを整理する。
     (2) 日常の円滑なコミュニケーションに向けてのアドバイス
      (3) 休暇中には、どのようにしたらよいか
      (4) 復職の時期に向けた準備と、復帰へ結びつける

(1)(がんに罹患したことを)誰にどこまで伝えるかを整理する。
   ①伝える必要があるのか、どうか
   ・安全配慮義務との関係
   ・配慮するべき、してもらうべき事項があれば職場の担当者、患者の間で考える。
  (特に治療や後遺症等により、仕事に影響や支障が生じる場合、医療者の見解・指示の共有が大切です。)

 ②患者の気持ち、職場事情を確認
   本人の意向と職場の事情を照らし合わせながら、伝えるメリット・伝えないメリットを一緒に整理する。

 (2)日常の円滑なコミュニケーションに向けて
 ①職場の人たちが相談者を“見ている“ことを知る必要があります。
   ⇒病気のことを伝えても、伝えなくても、一緒に仕事をしていく 
     仲間として、どう接していくかを改めて考える必要があります。
 ②これからも気持ちよく安心して仕事を続けていくために
   相談者自身にも出来ることがあるはず
    ◆コミュニケーションのちょっとした工夫
     ・感謝の気持ちを伝える。
     ・できることは精一杯する。
     ・「できないこと」ではなく、「できること」を伝えていく。

 ⇒自分自身で職場での「居場所」を取り戻していく努力も必要

 (3)休職中には
 ①相談者は医療者を通じて自分の状況や見通しなどをしっかり把握、定期的に報告し、勤務先はそれを理解する。
  ・相談者/お礼や、最近の自分の状況・今後の見通しを勤務先に伝える。
  ・勤務先/受入れ態勢の準備を整え、スムーズな復帰体制を
4)復職の時期にむけた準備、復帰へ
 ① 患者は生活習慣を整える
   入院や治療などによって乱れた生活リズムを取り戻す努力をする。
 ② 模擬出勤などで実際にイメージをする
   患者は通勤に利用している交通手段で、通勤時間に勤務先まで行ってみる。勤務先はそれを見守る。
 ③ 具体的な復職の時期・仕事内容を確認
   復職に際し、患者と担当者は配慮の必要の有無・要望について改めて話し合う。
   (勤務時間短縮、配属先、事情の公表先や範囲など)
 
 医療者は引き続き、患者の職場復帰が最善の形を取れるようアドバイスする。
  ・医療者/患者の仕事内容を理解したうえでの職場復帰に向けたアドバイスや、必要であれば勤務先との連絡を取る。

       ⇒第三者の情報共有により、復職後の望ましい環境を作ることができる。 



 
■患者目線の情報発信

就労・生活面に悩みをもつがん・難病患者や家族への情報提供・相談支援
弁護士、行政書士、社労士、ファイナンシャルプランナーなど、多士業連携で対応
 どういう状況のどういう形であれ、自分で自分の受ける医療や支援、さらにその後の自分や家族の人生のあり方を選択できるように。

 適切な情報を得て『選択・活用』する時、医療者や企業に留まらず、行政・議会や世論を含む社会全体が、良き伴走者としての役割を担うことが望まれます。

  
なによりもあなたとあなたの愛する人のため、かけがえのない日々を大切にして下さい。