2015年4月15日水曜日

近畿がん政策サミット2015 ふりかえり

2015年3月22日(日)に、近畿がんサミットが神戸市勤労会館にて開催された。
東京大学公共政策大学院医療政策・教育研究ユニット 特任教授 の埴岡健一先生に基調講演をして頂いた。がん対策市民フォーラム「がん対策のこれから」「近畿地区がん対策の現状と 地域でがん対策を継続的に高め合っていくために」 という演題であった。その後、各府県がん対策推進責任者、及び各府県がん患者団体連帯組織代表から「がん対策推進計画の現状と課題」(“がん検診の質と受診率の向上対策”と“他府県に紹介したいがん対策”を含む)について報告し合い、近畿圏域の交流を図った。

このサミットでのまとめとして、①がん患者の就労支援をどうするか? ②がんの早期発見のための「がん検診」の受診率アップをどのように行うか? ③各府県のがん対策の好事例を共有しよう という提案があった。
各項目を簡単にまとめる。
  がん患者の就労支援をどうするか?
・各治療医師が、がん患者さんに「治療が始まってもすぐ仕事を辞める必要ない」と説明することが大切であると強調された。
・緩和ケアと同じように、就労支援もニーズの掘り起こしが大切!
・埴岡さんからの情報提供として、東京都はがん患者の就労支援を行った優良企業情報を公表し、表彰した。会社名はウェブに公表されている。このような取り組みも大事ではないだろうか?
・がん拠点病院の中で、ハローワークとの情報共有が大切である。がんになっても働ける企業の一覧リストを患者から要求されている。相談支援センターの強化が必要である。
・京都では「企業に出向いて、がん教育をしている」。京都府からの企業教育を受けた会社は、健康づくりとして認証し、ホームページに掲載される。これが会社のモチベーションになる。こういう好事例もある。


  がんの早期発見のための「がん検診」の受診率アップをどのように行うか? 
・コール・リコールは、何らかの形ですべての府県でやっている。
・兵庫:がん検診受信者名簿の整備が大切。年齢上限の設定が必要ではないか。集団検診以外で、個人ががん検診を受信した時に、情報を取り上げて統計に反映することが難しい。
・大阪:重点勧奨対象を設定している。がん検診受診対象者にクーポンを配布したが、年齢制限でクーポンをもらえなかった人から逆差別ではないかとの抗議があった?
・奈良:平成25年度からコール・リコールを、モデル的に先行する町で行っている。年齢のターゲット等、効果的な方法を今後検討したい。

・各府県から以上の報告があった。コール・リコールの戦略を立てるためのデータを取るのが難しいが、ゴールデンルールはないのか?今後、普遍的なルールが見つかれば多くの都市が恩恵を受けるので、好事例を詳細に検討する必要がある。


    各府県のがん対策の好事例を共有しよう
・患者さんにとって効果がある政策が必要である。個々の政策を、患者さんのメリットにどのようにつなげていけるのか?このようなことを考える必要がある。
・未来の患者に向かっての施策と、その施策が今の患者さんに対してメリットがあるかの乖離に不安を覚えている。
・タバコの禁煙が、がん対策の基本である。目標設定が大切であるが、政治や商売が絡んでいるので実施が難しい現状がある。
・医療従事者への緩和ケアの研修を受けさせることよりも、患者さんへの簡単なスクリーニングの相談を行うアプローチで、患者さんの状態が良くなる事例が報告された。
・種々の施策のうちどれを採用するかについて、吟味して効果判定する必要がある。
・できるだけ早く、患者さんに効果が届く施策を見つける必要がある。


以上が、本サミットで得られた成果であった。